2018年の夏の終わり頃の記録:『ペンギン・ハイウェイ』がめちゃくちゃ良かったということ。

こんばんは。

 

今回は前やってたブログで紹介してた『ペンギン・ハイウェイ』の記事をこちらのブログに残しておきたいなと思ったので、ここに掲載させて頂きやす。

 

2018年の夏の終わりごろに書いたものです。

すごく好きな作品で、この季節にぴったりなので、よろしければどうぞ。

 

 

 

 

 

 

ペンギン・ハイウェイ」を観ました。

結論から言ってめちゃくちゃ良かったです。お姉さんと少年の一夏の物語っていうだけで個人的には心惹かれるものがありますが、SF要素も楽しくて良かったですし、主人公のアオヤマ君のキャラクターがすごく良かったなぁと。好きな要素がたくさんある作品でしたので、色々と書き殴って見ようと思います。

(諸々ネタバレしてますのでご注意ください。)

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映画『ペンギン・ハイウェイ』 予告2

 

まずは何と言ってもこの作品のアニメーション表現の豊かさに唸りました。予告編でも流れているコーラ缶がペンギンに変容する作画をはじめ、石田監督の過去作にも通じる街を疾走する様を描く描写も素晴らしかったですし、作中で重要な要素となる「海」の表現はCGで描かれるなど、何れにしてもクオリティの高いアニメーション表現が堪能できます。と同時に個人的に好きなのが、布を拡げる時やパラソルが開ける時といった、なんてことない描写の躍動感で、こういう所にもとても心躍らされました。


「フミコの告白」Fumiko's Confession

 

逆に海辺のカフェのシーンやお姉さんの住むマンションでのシーンなど静かな場面も印象的で、この静と動の緩急も良かったですね。

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声優さんたちも見事なハマりっぷりでしたね。アオヤマ君役の北香那さん、すげぇいい声だったし演技力もあって、初見時は普通の声優さんなんだと思ってましたが、後から声優初挑戦だと知って超びっくりでした。お姉さん役の蒼井優さんもハマってましたよ。かなりアニメ的なセリフ回しの多い役所だと思うんですが、流石の蒼井優力というか、宮崎あおいとかが声優やる時の上手さに通じるところがあって見事でした。メインの二人以外は割とベテランの声優さんを使っていて脇をしっかりと固めるというバランスも見事な采配だなと感じた次第でありました。

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また最初の鑑賞時は原作未読の状態で行ったんですけど、その後、原作を読んでからも鑑賞しました。原作も本当素晴らしかったのですが、読んでから映画を観ると、映像にする時の構成が見事だということにも感心させられました。

映画だと省略されてるエピソードや出てこない場所もあるのですが、一つのシーンに違和感なくまとめていたり、映像で補完していたり、見事な脚色・構成だなと。

個人的には後半、アオヤマ君の妹が夜中に突然起きてお母さんがいつか死んじゃうことを心配して泣いてしまうシーンがあるんですが、(これ自分も子供のころに経験あります。死んじゃうことが怖くなるっていう)この後、原作ではウチダ君がそのことについて仮説を話す場面があり、ここのウチダ君の仮説もかなり面白いし、作品により深みを与えてるなと思いましたが、映像化でカットした判断は個人的には良かったと感じましたね。妹の泣くシーンだけ語り過ぎないという余白が生まれて、とても味わい深い演出になったんじゃないかなと。 

また映画では語られてない、アオヤマ君が正方形が好きというエピソードも、話としては出てこないんですが、美術や背景で正方形のものをしっかりと描いて補完していたり、本当に見事な映像化だと感じました。 

ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)

ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)

 

 

そして僕が個人的にこの作品を観て最も感動して、最も魅力を感じて、なおかつこの作品のテーマなんじゃないかと感じたのは、

「『わからないこと』に向き合う。」ということでした。

身近でこの作品を観た人や、SNSの感想を観ていると「よくわからなかった」というような感想を結構耳にしました。

実際、僕も最初観た時点ではお話的に?な部分があったのですが、鑑賞後に、この作品で提示される謎を考えていることが楽しくて、しかもこれをずっとアオヤマ君は作中で最初から最後までやってきていたし、この「わからない」ということに向き合うことこそが、この作品の魅力にもなっていると感じて僕はより一層この作品が好きになりました。

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海やお姉さんについての考察もそうですが、「おっぱい」に関するアオヤマ君の疑問がすごくいいなと。劇中、アオヤマ君が考えていた、どうして母親の「おっぱい」とお姉さんの「おっぱい」ではこうも感じ方が違うのか、、、

これ僕みたいな薄汚れた大人だったらすぐにでも、いやエロいからや!とかお姉さんが好きやからや!異性として見てるんや!性の目覚めや!とかすぐ出てきてしまうんですが、あくまでアオヤマ君は自分の中の理論を自分の中に落とし込みたいんですよね。だからこそ真摯に、いや紳士に、おっぱいについて考えると。

こういった「『わからないこと』に向き合う。」ことの魅力が全編に渡って語られているのが、このペンギン・ハイウェイの最大の魅力だなと僕は感じました。

しかもこのおっぱいがめちゃくちゃ重要な要素でしたね。この謎についてアオヤマ君はお姉さんとの結末を通して、または結末を意識することによって、答えに気付いていったのだと思うんですね。これが本当に切ない。ていうかここで気付く答えがこの映画のすべての謎の答えでもいいんじゃないかなとも思ってしまいますね。

一応原作を読むともうすこし詳しくお姉さんや「海」についても語られていますが、それでも謎は謎として残しているというか、受け手が考える余白があるなと感じました。

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そして、この映画のラストシーンも本当に素晴らしかった。

あるものが映って終わるんです。これは原作にはない描写なんですが、これがまた原作とはまた違った余韻を残してくれたというか。更に受け手が考える余白を残してくれます。これがまた僕はとてつもなくグッときました。その後エンドロールで流れる宇多田ヒカルの『Good Night』も作品に寄り添ったというか、(この楽曲も原作で出てくるエピソードを補完しているという意味でも素晴らしいです)青山君に寄り添った素晴らしい楽曲で、特に最後の歌詞にホロっとさせられました。

 

 

 

 

 

その他にも、出てくる文房具がどれもいい!とか、「抜いてあげようか」の件も最高だ!とか、、、まだまだ色々と語りたいことは山ほどありますが、、

公開している間はまた観に行きたいですし、ソフト化されたら間違いなく買って定期的に観たいと思えるぐらい素敵な作品でした。

 

夏はもう終わってしまいましたが、これぐらいの時期に観るのもまたいい作品だと思いますので未見の方はぜひ。

 

 

 

 

 

ぐんない。

 

 

【今夜のおやすみソング】